NAGOYA支部教育連合会開催「ディズニーランドにおけるサービスの基本」


平成17年11月29日 NAGOYA支部教育連合会開催「ディズニーランドにおけるサービスの基本」
講師 元(株)オリエンタルランド専務取締役 山下 尭(たかし)氏

「心の産業」としての東京ディズニーリゾート経営

ディズニーランドは1983年4月開園以来22年10ヶ月で3億7500万人入場。
日本人全てが3回ぐらい来た数字だが、人口の半数はまだ来ていないと思う。
98%がリピーター(20回以上のリピーターも40%)
理容業もリピーターが多いので課題は同じ。
1兆円の建設投資→サービスの質の維持が大切
映画の世界がそのまま→客を徹底的に喜ばせる→こだわりが必要
人まねでない自分のやり方がお客さんに「ココでないと・・・」と思わせる
遊園地→アミューズメントパーク→観覧車・メリーゴーランド・ジェットコースターが三種の神器→機械がもてなす→機械が主役
エンターテイメント→人の演技力がベース→人間が主役

ディズニーで夏場に働く人は25,000人 学生6割・パート3割・正社員1割
ハピネスにおくれるか?→スローガンであり具体的目標
オンステージで6割、バックステージで4割の人が働いている
バックステージで働く人も「ハピネスにおくれるか?」と考えている
ノルマは与えていない→1人1人が、ただお客様の為に一生懸命やっているか

イマジネーションとコミニケーション
イマジネーション→お客様の頭の中のモノを具体的にしていきたい
夢の実現を具現化する 本物以上の本物らしさ 元々ないものだから余計に大変
本物を創る→本物を感じてもらう為に「USJ」の2.5倍かかったディズニーシー
客が「マイッタ!」と言わせるのが仕事 言わせないと自分が参ってしまう
それに対してこだわりを持つ
コミニケーション→周りの人と話したくなる世界
来る時は別々の顔で来るが、帰る時は同じ顔
「祭」→エンターテイメント→心を繋げる
「夢」と「心」が1ヵ所で感じられる 心で感じる
店だけ綺麗でもお客さんは何も感じない

・なぜアトラクション内の「非常口」の看板が小さくないといけないのか?
→夢の国を創っているのに現実に在るものを持ってきてはいけない
非日常の世界を創る為に本気でやる それにはお金もかかる
・1日300人の迷子→呼び出しのアナウンス→夢が覚める
ベビーセンター→無線機でスタッフに連絡→スタッフが親を探す
最近の家族連れはリピーターが多いので、自分達が十分楽しみ帰る時に迎えに来る
・販売セクションはスーパー等で売っている物を置いてはいけない
割引等の張り紙・値札も付けてはいけない 
売れ残り商品を値下げする時も手作業で張り替える→もとの値段がわからないのでお客さんには安くなったか判らない
それらも夢の国を本気で創ろうと考えているから→それが「こだわり」

小さなテーマはイッパイある
人は誰しも変身願望がある→そういった楽しみ方を与える
他のテーマが入るといっぺんに成り立たなくなってしまう→ルールが厳しい
お客にもルールを与える→そんな商売は考えられなかった(お客様は神様だった)
弁当の持ち込み禁止→雰囲気を壊す→儲け主義ではない→説明しきれない→トラブル
何年か前のアンケートで「ディズニーランドで良いところは?の結果の1・2番は弁当・お酒がダメなところだった」
お客さんの側がそれに気付くと「スゴイ・・・!」になる
人真似ではダメ→「ウチのサービスはコレだ!」というのが大切

何度も来ている人達にも新しい発見→リピーターを創る演出を続ける
我々にはイマジネーションが1番大切
縁の下の力持ちが評価されるように→その力が生きるようにしないといけない

「いらっしゃいませ」とは言わない→お客さんは返す言葉がないので黙る
「こんにちわ(こんばんわ)」と言うとお客さんからも挨拶が帰ってくる→コミニケーションの手段
「イラッシャイマセ。コンバンワ」では返事が出来ない
スマイル→(特に上司から)言われると苦痛→人から言われるものでなく自ら出てこないと疲れる
中間管理職、経営者の方がスマイルがない サービス業はスマイルが1番大切
全ての客に・・・と言うが好き嫌いが出る→それを出してはいけない
公平にするという事は難しい→やらなくてはいけない

サービスとは何か? お金を貰って何をしているか?
満足する心・気持ちを提供 提供する側と受ける側がある
売上を上げようと思うと「サービスを・・・」という気持ちが生まれる→姑息な手段が多い
「サービスしておきますよ・・・」→安くする・景品をあげるといった意味になる
「買って欲しい・・・」という思いがまるわかり
ポイントカード→持っていない人は損をしたと思う→お客の囲い込みの手段→お客に押し付けている→提供者側の発想
サービスとはサービスそのもの お客の立場になって心からやる事
本当に相手の立場にたってサービスをすると相手から礼状が来る
物を売ろうとするサービスは一方通行→お客は受け止めない→当たり前と感じる
サービスは双方向 サービスの意味は客が上。奴隷・召使になれ
お客さんは上にいない、横にいる。サービスのやりがいはお客さんの笑顔
その笑顔が見たい為にやる→笑顔が戻ってくる・返ってくる
1番は技術、サービスだけでは成り立たない→心と一緒にならないと・・・
相手の気持ち通りにやればクレームは出ない
技術と心の両方一緒に提供
信用・信頼をどう気付くか→そういった人をどれだけつくるか
床屋に行く時の気持ちは1個人でも色々ある→その時の相手の気持ちでやっているか?

良い体験をさせる(good experience)→マーケティング
嫌な事をした事に意外に気付かない→嫌な思いをさせると簡単に逃げる→仕事のディフェンスを強くする
嫌な事があったらその場で言って欲しいがクレームを言うのは20人に1人
後の人は黙って他所へ行ってしまう→怖い事
値段で動くのではなく嫌な事があったから動く
理性ではなく感情で動く→そこが怖い 1人1人が徹底的にチェック

「SCSE」→判断基準
S(safty)→事故とか衛生上の問題を絶対に起こさない→安全の心
理容業では衛生上の問題が非常に大きい お客さんに疑問に思われただけで失格!
C(Courtesy)→礼儀正しく
S(Show)→最高のものを用いる クリーン→掃除の仕方→トイレが1番重要
「スマイルとトイレが綺麗な事が重要」
E(Efficiency)→効率良く お客さんを待たさない→ダラダラやっていると思われない事も大切
どうやったら待たせずにすむか?の結果1日15万食を提供できる設備になった

理容店の場合、やっている事はどこでも一緒→どこで違いを出すか?
サービスに対する教育をどうしたら良いのか?
書いた事は頭に入る→テクニック→マニュアルで反復する→間違わない為→サービスではない→お客様の笑顔の為
お客様が喜んでくれた思いを体験集にした
「ゲストの満足とキャストの満足は”車の両輪”」という環境が出来るともっと一生懸命にやる→教育ではない
生き生きとお客様に喜んでもらえるような環境作りが経営の基本

経営は三角形の組織→逆三角形にする必要がある
△→管理監督型→しっかり働くように文句を言う→物造りの型
▽→実際にお客様に携わる人がプライドを持って、楽しく働いてもらう環境作りに徹する
ディズニーはアルバイトが会社の顔→正社員がサポートしていく

心って何?→思いやり・親切心→相手に通じるのが大切
思いやり+熱意(←こちらの方が大切)
地域のコミニケーションセンター→そういった付き合いが大切→地域の方に喜ばれるように


以上が通常の冷蔵庫に入れる内容で、これ以降はボイスレコーダーを起こしたものです



1.ディズニーランドの近況
ディズニーランドが1983年に出来て、ディズニーシーが2001年に出来た際に名称をディズニーリゾートとしました。
東京駅からわずか15分で行ける所でリゾートではおかしいのでは?と思われるかもしれませんが、出来るだけ滞在型のお客さんに来て頂きたいのでリゾートという名称にしました。
1983年4月のオープン以来、22年7ヶ月で3億7500万人の人に来て頂きました。日本の人口が1億2700万人なので、日本人全員が約3回近く来て頂いた数字なんですが、実際は半分位の方しかみえていません。2回以上来て頂くリピーターの方が98%と非常に多く、10回以上の方が60%以上、20回以上の方が40%以上あります。リピータの獲得が事業の目標となります。
理容業の方も固定客・常連・リピーターが90%以上だと思いますので、課題はディズニーと同じだと思います。

サービスというのは実体験するとわかるのですが、事業の基礎が出来た後、サービスの質を維持する事が難しいので、常にサービスの質をを維持していくかが大きな課題だと考えています。
理容業の方が日常的に考えられている事と、ディズニーが考える事は同一であると思います。

2.ディズニーランドの世界とは
ウォルト・ディズニーが創ったというのはご存知でしょうが、何故テーマパークを作ろうと思ったのかと言いますと、2次元の映画・映像の世界でなく、実体があるものを創りたかったからです。ともすれば遊園地になってしまいがちですが、ディズニーランドのベースは映画の仕組みがそのまま生きている。今日お話しする従業員の事をキャストと呼ぶのも映画用語で、到る所で映画の世界がそのまま実現したという事です。
ディズニーの映画作りというのはお客様を徹底的に喜ばせたいという事で、どんな細かい事でもなおざりにしない、喜ばせたいという精神が非常に生きています。

私はサービスというのは「こだわり」が1番必要だと思います。自分のやり方。人まねしない。自分はこういったサービスをする。そういったものを持つべきだと思います。


@テーマパークのコンセプト
エンターテイメント・テーマパーク
どういう考えかという事ですが、その時代にあったのは「遊園地」、今の言葉で言えば「アミューズメント・パーク」です。アミューズメント・パークの特徴は色々あると思いますが、機械が置いてある。機械がお客様を楽しませる、喜ばせるという事です。
遊園地には観覧車・メリーゴーランド・ジェットコースターの3種の神器があって、最近はどんどん大きく、スピードを求めてきています。昔は子供連れでゆっくり行けたのが最近は若い人が集まる所になりました。
それに対してディズニーはエンターテイメント。映画とか演劇と同じで、機械で動かすのではなく、人の力、演技力がベースです。機械が主役ではなく人間が主役という考えです。それが人に対するサービスの原点なんです。
ディズニーリゾートは従業員が多く、夏場は25000人にもなります。社員は1割弱、学生アルバイトが約6割、パートの方が3割強なんですが、そういった体制でもベストのサービスを実現する為に努力をしています。


A経営理念は「ハピネス」の提供
ディズニーランドという場所で、如何にハピネスにおくれるか?、「君達も具体的にハピネスをおくってくれよ」という1つのスローガンというか、具体的な目標だと感じています。
お客様がみえるところを「オンステージ」、お客様が入れないところを「バックステージ」と言い、オンステージの部分が6割、バックステージの部分が4割です。
このバックステージで働く人達も「このメニューでお客様が本当にハピネスにおくれるのか?」と何度も打ち合わせをしている。これが大事な事なんです。
どこでも本当にハピネスにおくれるか?という事からつめている。だからお客様がハピネスを感じる事になると思います。

もう1つディズニーの特色ですが、ノルマを与えていないことです。お客様に対して色々なスローガンを掲げている会社があると思うのですが、現場の人が会社からノルマを与えられて数字ばかり追っているのでサービスがおろそかになる。これはどこでもそうです。実際にお客様がいらっしゃって働く人がノルマの為にしているのか、ハピネスを提供する為にしているのか、お客様は敏感に感じ取られます。
「この人達は本当に私達のために一生懸命にやってくれている」サービスで1番肝心なのは、実際に行う1人1人の従業員が真剣にやっている事だと思います。1人1人のお客様にどう対処するのか?これが原点ではないでしょうか。


キーワードは”Imagination”と”Communication”
a.Imaginationが拡大する世界
イマジネーションは、「そこにいらっしゃったお客様の頭の中で描く映像を具体的にしていく」。楽しい場所というのはイマジネーションがとても大切で、歌や音楽を聴いて情景が浮かんでくる等イマジネーションで聴いているわけです。

・”Dreams come true”を実感させる
夢が実現するという事ですが、ディズニーが作り出した映画の世界を本当に感じてもらう、夢を中心にどう実現していくかという事です。
他のテーマパークはオランダ、スペイン等の実在のモデルがありますが、夢をテーマにして、あそこへ行くと夢が叶えられる・・・といった所は他にないと思います。夢をお客様にどう感じて頂くか?というのがイマジネーションです。

・”本物以上の本物らしさ”を追求する
本物以上の本物らしさというのは、元々ないもの、イマジネーションの世界のものを本物と感じてもらわないとお客様のイマジネーションが広がっていきません。
本物と感じてもらう為に真剣に取り組んで作り出すしていく技術なんです。
静岡大学の火山学の助教授が「世界に火山の模型が沢山あるが、1番素晴らしいのはディズニーシーの火山だ。地質とか地層がきちんとある。噴火した気泡まである。本物以上ではないか・・・」との話が新聞に載っているのを見て、造ってよかったと思った。
ディズニーランドは夢の世界なので、どこかに本物があるというわけではないのですが、ディズニーシーは冒険のドラマが表題で、ニューヨークの波止場、地中海沿いの港町をモデルにしています。ですので彼らは本物を造って欲しいと、本物って何かというと100年前、300年前の物を造って欲しいと言うわけです。今100年前、300年前の物を造作るという事は容易ではないわけです。赤錆が堆積したり、石畳が割れたり色がはげたり、雑草が生い茂った等の感じを最後は全部手書きでしました。
遊園地というのはハリボテが多いのですが、お客さんが遊園地のつもりで来るとハリボテでなく本物があると感じてくれる、感動してくれる。
お客さんの声を聞いているとわかります。「これにはマイッタな〜」と、仕事というのはお客さんが「マイッタ…」と言わないと、こっちがマイっちゃうんです。マイッタと言わせるのが仕事なんです。
理容の仕事も技術、サービスで「あぁ、これにはマイッタ」と言わせる事がとても大切だと思います。それと最初に言ったこだわりが大切だと思います。

b.Communicationを取り合える世界
ディズニーの中にいると周りの人と話したくなる、そういった雰囲気があります。エンターテイメントという言葉は、エンターというのは入り口から入る、テイメントというのはホールドする、保つ。だから「おもてなしする」。そこの1番のポイントは何かと言うとたとえば映画では、大勢の見に来る人達は、来る時は別々の顔をしているんですが、帰る時は涙を流したり、楽しそうな顔をしたり、皆同じ顔をして帰るわけです。これがエンターテイメントの1番の狙いなんです。来た人皆の気持ちが繋がる。こういう要素が非常に大事なんです。ディズニーランドに来ると、何となく知らない人達にでも声をかけたくなる。それがディズニーの1番の狙いで、私達のサービスの非常に重要な部分が、そういった気持ちになるようにおもてなしする。またステージのショーを見たり、パレードを見たりする事によって皆同じ気持ちになる。言ってみればお祭りに参加したみたいな感じになる。これが大事なんです。
皆さん「祭り」って本当にわかってますか?祭りというと、やたら威勢がいいとか、元気がいいとか思いますが、実は祭りというのは本質的にエンターテイメントなんです。そこで祭りを演ずる人、来たお客さん、皆気持ちが繋がるという事なんです。お祭りの時に他事を考える人はいません、皆が同じ事を考えてお祭りに参加している。皆の気持ちが1つになっている。それがポイントなんです。それによって何となくコミニケーションが取れる。あるいは人を楽しくするという要素が非常に大切です。私はやたら目立つだけが祭りじゃないと思います。何か人と話したくなる、そういった事が実現するのが祭りのテーマだと思います。
イマジネーションを広げるという事は夢を広げるという事で、コミニケーションをとるという事は心を繋げるという事で「夢に心」なんです。ディズニーランドの1番のポイントは夢と心が同時に感じる事が出来る事です。素晴らしい夢創りをして、かつ夢のある場所を見て感じる。そして心が伴っていると2つが一致して「素晴らしい」、「来て良かった」と感じる事が出来る。これは皆さんも同じだと思うのですが、いくらお店だけがキレイデもお客さんは感じないんです。素晴らしいお店の中で、素晴らしい技術、それに心を感じる。それらが合わさらないといけないんです。バラバラではいけないんです。

私は最初の3年間は建設の仕事をしていたんですが、アメリカのディズニーのスタッフが我々社員の倍の300人ぐらい来て仕事をしたんですが、「非常口」も今のように小さくなるのに25年も掛かったんです。その頃は2mぐらいの非常に大きなサインだったので、ディズニースタッフに「君が役所に行って交渉してくれ。2mの非常口のサインがあってはディズニーランドは成り立たない」と言われ行ったんですが、小さくなんか出来ない。お役所厳しいのでダメなんです。ところが役所と話し合いをするうちに「ナゼ非常口のサインが大きくてはマズイのか?」わからなくなってしまったので会社に帰って聞いてみました。そうしたらスグには答えずに「君はディズニーの映画を見た事があるだろう?」と聞かれたんですが、私は会社に入るまでディズニーの映画は1本も見た事がなかったので、そう言うとビックリしてビデオを貸してくれました。それで「不思議な国のアリス」を見たんですが、当たり前ですが非常口のサインの話が出てこないんで「何を言っているんだこれは?全然わからない・・・」と言ったら「不思議な国の森の中に入っていくときの入り口に非常口のサインがあったろうか?」って言うんです。
「それはないよ」と言ったら、「実は我々は夢の国を創っているんだ」と言うんです。非常口のサインというのは現実に使っているものなんです。だから現実に使っているモノを使う訳にはいかないと言うんです。真剣に夢の国を創っているのがわかったんです。さっきのこだわりの世界なんです。それで法律だけは勘弁してもらって出来上がったのは本当の夢の世界なんです。
入られるとわかると思いますが、現実のモノはまず見えません。電車も高速道路もマンションも中からは絶対見えないように、非常に高く土を盛って木を植えて、正にここは本物の夢の世界というものを創ったんです。

B施設構成・運営方法の基本
a.非日常世界
これは皆さんがディズニーランドにおいでになると「あぁ、ここは夢の世界だ」と、わかると思います。おいでになったお客様に宿泊して頂く為にホテルが必要なんですが、最初は超高層のホテルの計画が出てきたんですが、中から見えては困るので10階までならOKという事で土地の払い下げをしたんです。ですから周辺のホテルは横長が多いのです。まさに夢を確保する、維持する為に非常に大変努力もしましたしお金もかかりました。
オープンしてからも大変な事ばかりでした。皆さん現実世界からみえるので、現実世界のやり方をディズニーに求めます。
当初は1日300人ぐらいの迷子が出ました。そうすると呼び出しのアナウンスをして欲しいと言われますが、1日300回やるといっぺんに夢から覚めてしまう。それではまずいので入り口近くにベビーセンターを設けて、泣いている子供を連れて行き収容して、スタッフに無線機で子供の特徴を話して親探しが始まります。親に収容している事を知らせるのに3時間もかかってしまうので、最初の頃はこの対応で大変だったんです。
今は全然違ってベビーセンターの人が大変困っています。なぜかと言うと何十回も来られているお母さんは、子供が迷子になってもベビーセンターにいる事をと知っているので平気なんです。子供が居ない方がユックリまわれるので、帰る時に迎えに来られるんです。
私は商品の販売担当もしていましたが、最初に「スーパーやコンビニに置いてある物は一切置いてはいけない」と言われた事に大変ビックリしました。日常の商品で買い物を思い出してはいけないですから全て自分の所で開発しました。全国方々のメーカーにパッケージを変えたり、ミッキーマウスの商品を作ったりお願いしました。
最初は想定以上に売れたんですが、わからずに作っているので売れない商品も沢山出ました。山ほど在庫があってこれを処分するのに大変困りました。これにもスーパーやコンビニでやっている方法をやってはいけないわけです。張り紙をしたり、値札を別に貼って前より安くなった事がわかるのがいけないんです。皆が徹夜で残業して値札を張り替えるんです。その作業がとても大変なんですが、その方法だと値段が下がった事がお客さんにわからないんです。知らせることが出来ないんです。日常的な事をやってはいけないという事はとても大変な事なんです。
自動販売機もあそこにはありません。夢の国ですから普通の町並みと同じになってはいけないのでないのです。
ディズニーはお客様にとって「変だ」と思ったりする事がないよう夢の国を本気で、こだわりを持って創ったわけです。

b.テーマ性・ルール性の尊重
ディズニーランドはテーマパークです。大きなテーマは夢だけれど、小さなテーマは一杯あります。その1つのテーマごとにアトラクションや食堂、従業員の着ているコスチューム、ゴミ箱1つまでそこへ行くとその世界に統一するわけです。だからお客さんも「今日はディズニーランドに行くんだけれど、ウェスタンランドに行ってゆっくりしよう・・・」とかされる方がかなり多いです。
人間は誰でも変身願望というのがあります。理容師さんは変身願望を手伝っているから、そこを1番理解しないといけないですよ。
映画の世界というのは他のテーマがチョッとでも現れると成り立たない、凄く厳しい世界です。私どもの従業員が隣のランドから手伝ってくれと言われ、隣のランドへトコトコと歩いていったら大変な事になります。いちいちバスに乗ってオフィスに戻って着替えて、またバスに乗って行くという事をします。ルールが厳しいんです。そうでないと成り立たないんです。
私が大変ビックリしたのはお客さんにもルールが沢山あるんです。こんな商売見た事がない。お客さんは何をやっても良いっていうのが商売だと思ったんですが、お弁当も食べさせない、中ではお酒も出さない、これレは最初大変トラブルになりました。そうですよね。お弁当を食べていると「出て行ってください」と言われるんですから。本当に従業員泣かせでした。「弁当を食べさせないのは儲け主義だ。食堂で食べろと言う事か」そういった事を説明しきれないんですよ。
たとえばファンタジーランドで新聞紙を広げて海苔で巻いたおにぎりを食べていたり、お酒を飲んで真っ赤な顔をして歩いている人がいるとファンタジーランドが成り立たなくなってしまいますから・・・ 
もっともディズニーシーはイタリアの港町、そこのレストランでワインなどのアルコールがないと成り立ちませんから、だからディズニーシーではお酒が飲めるんです。お酒が飲めるという単純な理由で来て頂ける方もありますが、テーマまで理解して来て頂ける方は少ないと思います。
という事で色々なトラブルがあって大変だったんですが、以前ディズニーランドのお客さんにアンケートを取ったら、ディズニーランドの良い所を挙げてくださいの1番・2番にお酒を飲ませない。お弁当を食べさせない。が入ってビックリしました。
私が悟ったのはディズニーは凄い。「こういった形で楽しんでください」と自分に主張がある。こだわりなんです。それがハッキリしているからお客様が気付く。気付くと「あそこは凄い!」という事になるんです。
今、商売というのは「人マネ・物マネの世界」なんです。同業者が「アソコがやっているならウチも・・・」というのが多い。他所がやる事ばかりを研究しています。だからお客さんから見るとどれも同じに見えてしまう。1番大切なのは「ウチのサービスはコレだ!」というモノをハッキリ・キチンと打ち出して、それを貫く。という事が大事なんです。これは何でも同じです。「ウチはこうやる」→「ココは他とやり方が違うけれど、ここはこうなんだ」とわかってもらう事が商売で大事なんです。そういったこだわり、サービスのこだわり、本当に細かい事でもこだわりを持って対応する。それが非常に大事な事なんです。

c.新しい発見と感動の世界(ディズニーランドは永遠に未完成)
ディズニーランドにいらっしゃると常に新しい発見、新しい感動があるという事なんですが、映画でも同じ物を3回見ると良いといいます。最初見た時とガラッと変わって色々なモノが見えてくる。新しい夢を導き出す事が大事なんです。
一度来られた方と、何度も来られている方とは見方が違うという事なんです。これは大変なんですが、そういった演出を続けているという事です。
800人の正社員でメンテナンスをしている人達がいます。この人達の特徴は昼間仕事がない事で、これを20年やっています。舞台や背景を変えたり、人形の動きを変えたり洋服を変えたり色々やっています。大変だろうと思うのですが、ここは「自分の発想がフルに生かせる場所なんです」イマジネーションはどんどん広がってきます。その広がりを現実に創っていく事がお客様に新しい発見をさせる。だからディズニーランドは永遠に未完成なんです。
イマジネーションは我々の仕事で1番大切な事なんです。常にこの人に対してどう対するか、感情を発育するかはイマジネーションの力がないと、年がら年中同じ事をしていればいいという事になるんです。せっかく自分が身につけた技術を、自分のイマジネーションをどうお客さんと共有し合うかという事です。
先ほど4割の人がバックステージで働いていると言いましたが、その人達は縁の下の力持ちですよね。この人達の力がお客さんに認められるような仕組みを作るのが大変なんです。そういうものが具体化するとお客さんに認められるという事で頑張れるわけです。
皆さんのお仕事は縁の下の力持ちでなくお客さんに接しておられるわけですが、色々な所でそういった力が生きてくる事が大事なんです。

d.心のふれあいと共感の世界(全てのゲストはVIP)
以上a・b・cまでは具体的な夢創りの事例なんですが、どういった心のふれあい、共感の状況を作り出すか、これはディズニーの英語の世界ではなく、日本人としてどうするか多くを議論しました。
まず、お客様に対する挨拶をどうするか?から始めました。思い切って「いらっしゃいませ」と言わない事にして「こんにちは、こんばんは」にしたんです。何故ならお客様は「いらっしゃいませ」と言われるとお客様は黙ってしまう。「こんにちは、こんばんは」だとお客様からも「こんにちは、こんばんは」と返ってくる。「いらっしゃいました」とは言えないじゃないですか。そうする事で挨拶は双方向となり、コミニケーションが取れるようにました。
最近はスーパー等で「いらっしゃいませ。こんばんは」というような挨拶が流行っていますが両方言われると「こんばんは」が出てきません。モノマネが多いと言いましたが他所がやっているからマネる。やり過ぎは好くない。自店は自店の決めた事をすれば良いと思います。
もう1つ大事なもの。それは「スマイル」で対応する事です。
じゃぁスマイルって何?という事なんですが、スマイルが必要なのでオフィスに大きな鏡を置いたり、標語を作ったり、一生懸命スマイル、スマイルと言って、ディズニーランドはスマイルが良いとなったんですが、ある時、ある部署で「スマイル、スマイルとウルサク言わないで欲しい」と言われた。「あまり言われるとスマイルに疲れちゃってスマイルが出てこなくなる」という事で、皆さん経営されている側からスマイル、スマイルと言うでしょ?言われると苦痛になる。人に強制れてスマイルするものではなく自分でスマイルは生み出すものなのです。
お店では店長や実際に作業される技術者の方がみえますが、スマイルがないのが店長や中間管理職の方で、もっとないのが経営者です。人の顔を見れば文句を言うんですね。文句ばかり言っていてお客様の前でスマイルするのは不可能です。だから疲れちゃう。
職場あってのスマイル。お客様にもスマイルが1番大事だし、サービス業なんだからスマイルを大事にする。その為には皆が仲良く雰囲気を良くする。そして上に立つ人ほどスマイルに溢れている。これが易しそうで中々難しいんです。
ある講演の後、「講師がスマイル、スマイルと盛んに言っていたが、最初から最後までスマイルが全く無かった」と手紙が来てビックリしました。私達世代はスマイルが無ければやって行けない状態ではなかったので表情が硬くなっちゃってるんですね。どうしようもないんです。もうこれは直らないんです。特に経営者の方、高齢になればなるほどスマイルが出ないんですよ。ですからスマイルを常に持つ、若い人達、従業員の方々のスマイルが枯渇しないようにしてやる必要があります。

全てのゲストはVIPこれも非常に大切です。公平にお客さんに接するというのは難しいんです。サービス業は人間が人間に対応するので好き嫌いがどうしても出てきます。これが怖いんです。皆さんも常連さんがみえると最敬礼しちゃうんでしょ。初めての人はその差に敏感に気付き「何だ!この店は・・・」となるんです。

ディズニーランドの世界は夢を味わえる、心を感じてもらえる。それをどう具体化していくか?から成り立っていくんです。ですから、あの世界を理解されればされるほど「また行こうか」となっていく。それ自体がディズニーランドの世界だと考えてください。


3.東京ディズニーリゾートにおけるサービスの基本
@「心の産業」=ゲストへの提供商品は”心の満足”
・サービスとは”心の対話”
私どもがしているサービスと考え方。これが今日1番にお話したいのはサービスとは何か?です。サービスってわかりにくいですよね。「サービス、サービス」と言って何を考えているんでしょう? サービスが何かわからないとサービスできないですね。
「心の産業」というのは大げさと思われるかもしれませんが、これを表題としたのは、皆さんの理容業というのはお客さんがどんな事をされるかだいたいわかってますよね。私達は何業? 遊園地業と言う人もいますが、お金を貰って何をお客さんに提供しているのかというのが1番大事なんです。機能として大事なんです。
そうすると私どもは何をお金を貰って差し上げて良いのかわからないんです。来て頂いてユックリ楽しんで頂く、さぁ、明日から一生懸命頑張ろうという気持ちを提供している。満足する心というか、心の満足を提供しているという事で心の産業といってます。
心の産業と世間に言ってどうすれば良いか? どうしたら心の産業だと感じてもらえるかという事です。突き詰めていくとサービスという所がポイントで、サービスとは何かと考えたんです。
サービスというのは提供する人と受ける人が必ずいる。そしてサービスというのは沢山あります。ナゼこんなに沢山できたかというと、提供する側が考えた事がほとんどで、売上を上げよう、儲けようとしてサービスをしようという考えがまずあります。少しでも沢山のお客さんに来てもらう為にサービスをどうするか。だからサービスというのは姑息な所もあるわけです。
「サービスしておきますよ・・・」という場合、「安くしておきます」あるいは「オマケに景品をあげます」という事です。どんな感じかというと「ありがたい」と感じる人もいますが、「値段を下げるって事は買って欲しいって事だろう・・・」と感じる人もいます。買って欲しいから値段を下げているだけ。「サービス、サービス」と言ってながらも買って欲しいのが丸わかりというのもサービスといわれてます。
スーパー等に買い物に行くとポイント制というのもあります。これもやたらと多いですね。ポイントカードを持っていないと「損をした」と思うんですが、これもバカバカしいし面倒くさいですがどの店もやっています。飛行機のマイレージサービスもそうですが、これらはお客を引き止める。囲い込む。こういった事でお客を放したくないという事です。サービスといわれても、どうして厄介な事を客に押し付けるんでしょうか?
ある国立病院に行ったら、婦長さんが「ウチはサービスを徹底しています」と言われるので、「どんなサービスをしているんですか?」とお聞きしたところ「全ての患者さんを患者様と呼んでいる」「凄いサービスですね」と言って来たんですが、さんを様に言い換えただけで「ウチの病院のサービスを見てくれ!」と言われても困ってしまいます。
という事で、提供した側が発想したサービスというのは、どうも一癖あると言うか、形だけのサービスが多いんです。サービスしなくちゃいけないというと何をして良いのかわからなくなって、値段さえ下げりゃ良いと思ったりして・・・
では、私どもは心の産業なんだからサービスをというと、サービスとはサービスそのものなんです。何の為のサービスではないんです、サービスとはサービス。という事はお客さんの立場に立って、お客さんの気持ちになって、心からやってあげるのがサービスなんですね。だからそういった様にしよう。と言ってもわからないので、顔を見ると文句を言う。
最後の3年間は教育の仕事についてお客様からの手紙をその材料にしました。その中の1つにこういったものがあります。
(細かい話は違いますが、亡くなった子供の為にお子様ランチを頼んだという有名な話です。私が書くよりこちらをご覧ください。この話が礼状の形で来たそうです。
http://www.egao.co.jp/smile-news/smile-news29.html
検索をしたらこちらも見つけましたのでよろしければこちらもどうぞ
http://plaza.rakuten.co.jp/mindcare/diary/200503130001/  )
この手紙を読んでビックリして早速社内報に載せました。調べるとお礼状は各部署に結構来ているそうです。やはり一生懸命やってくれている人がいたんです。
ここで皆さんにお話したいのは、本当に心から相手の立場になってサービスするとお礼状が来るって事です。新聞の投書欄にも「こういったサービスを受けました・・・」という人がいますよね。やはり人に幸せを与えるとこういった事があるんですよ。
物を売りたい為のサービスは一方通行なんです。お客様が受け止めないというか当たり前だと思うわけです。だけど、心からやってあげると「ありがとう」という気持ちで双方向となるわけです。サービスというのは双方向のものをサービスと呼びたいです。ですのでサービスとは「心の対話」といえます。色々な仕事を通じて相手の気持ちと触れ合う事がサービスだと申し上げます。
それと、「サービスばかりをしていると損ではないか?」と思った事があるんですが、これは何かというと、サービスというのはお客さんが上にいる。サービス・サーバントなど奴隷になりなさい、召使になりなさいといった意味なんですが。じゃあ、私の人生は一生奴隷か・・・と思ったんです。お客様は神様だからお客様の言う事は何でもきかなくてはいけない・・・自分の仕事は損しているなと思ったんです。それが色々な出会いがあって感じたのは、お客さんは上にいないんです。真横にいるんです。そして本当に一生懸命にやると「ありがとう」という感謝の気持ちが返ってくる。サービスの遣り甲斐というのはお客さんの笑顔。その笑顔が見たい、見る為に一生懸命やるものだと思います。
従業員や学生アルバイトがバイト料を稼ぐ為にしているって事は1人もないです。皆生き生きとしているでしょう。生き生きとやれば笑顔が戻ってくるというか、笑顔が貰える。そういう気持ち、それがサービスです。お客様の笑顔が待っていると思ってやる事が大事だと思います。
皆さんの仕事はコンタクトの密度が違いますから何が必要か、1番大事なのはやはり技術です。私どもの夢を創るのと同じで技術がいいかげんだったらサービスだけではダメじゃないでしょうか。技術、基本というのは大事です。だけど、それが心と一緒じゃないとダメなんです。先日も新聞で髪型を違うようにして訴訟された記事がありましたが、ナゼそんな事がおきたのか不思議に思いました。やはりこれは技術の問題でないのではないか、心の問題ではないでしょうか。相手の気持ちがちゃんとわかっていて、相手の気持ち通りちゃんとやってあげればクレームなんか出てこないんです。これは心の方が全然付いていかない、「私の言うとおりにしなさい」としたのではないでしょうか。技術と心が両方一緒という事が大事で、お客さんの持ってくる夢を叶えてあげるというのが技術だと思います。
我々も理容師さんも1番大切なのはお客さんからの信用、信頼をどのように築くかという事なんです。「他所の床屋さんには行かないよ」「この人意外にやってもらいたくない」という人をどれだけつくるかという事です。いかに信用、信頼してもらうかというと心なんですね。私も毎月床屋さんに行きますが、難しいのは床屋さんに行く時の気持ちが全然違うんです。今日はユックリ寝たい時もあれば、本が読みたい時もあるし、世間話をしたい時もある等それぞれ違います。世間話をしたくない時に話しかけられるのは嫌ですよ。
どうやってやったら良いのか?そこまで相手の気持ちになってやれるかどうかなんでしょうね。そういったきめ細かい対応が必要なんですよ。それが心の対応でしょう。

Aゲストのbad experience防止こそ最大の課題
私共が1番大切にしているのがgood experience、お客さんに良い体験をさせるというのがあります。企業というのはどうやってお客さんを満足させるのか、喜ばせるのか全員が考えています。それがマーケティングです。マーケティングというのはお客さんに、どうやったら最大の喜びを与えれるか、その為の手法です。ところがお客さんに不満足、イヤな思いをさせる事には意外と気付かないんです。言ってみれば仕事のディフェンスが弱いんです。細かい所でボロが出る。ディフェンスを整えるのが商売では大切なんですね。
リピーターでもイヤな思いをすると来なくなってしまうんです。皆さんもそうだと思います。イヤな思いをさせると他所のお店に行ってしまう。これが1番怖いんですね。
以前、九州の久留米で講演した時に名刺を交換した人から手紙が来ました。何と書いてあったかというと「私達夫婦はディズニーが好きで40回以上も行ったがイヤな思いをしたのでもう行かない・・・」といった内容でした。本の些細な事と思う事でイヤな思いをされたんですが、「ディズニーランドでそんな目に合うとは思ってなかったので2度と行かない」そう言われても困ってしまいますが電話をしました。「・・・この間の講演を聞いて私も考えています」と言われ、「またいらっしゃいよ」と言ったら喜んでくれてまた来る事となりました。それ以後1年に15回来るようになりました。それも来る前に必ず私の所に「行くから・・・」と電話が入ります。私が会社にいた時は会社に、辞めてからは自宅にかかって来ます。
その時思ったのは、嫌な事があったらその場ですぐに言って欲しい。そうすればどう対応したら良いかわかるから。所が、ある本を読んだらクレームを言う人は20人に1人。後の人は黙っている。黙っているだけではなく他所へ移ってしまう。もう二度と来てくれません。
皆さん方もリピーター商売。年中来ている人がある日突然来なくなった。凄く怖い事なんですよ。他所が○百円下げたから行っちゃったんじゃないかと思いがちですが、嫌な事があったから行ったんです。
人間はサービスを受ける時の気持ちは「感情」だからよく覚えているんです。床屋に来るお客さんは理性で来る人はいません。全部感情です。だからチョッとしたイヤな事があると二度と行かない。これが怖いんです。イヤな思いをさせて来させないようにする事がないように1人1人が徹底的にチェックする必要があります。

・キャストに判断基準「SCSE」を徹底
私共は従業員に判断基準を与えています。それが「SCSE」です。
S(safty)
事故とか衛生上の問題を絶対に起こさない。これは規則を作ってやれば良いという事ではありません。安全を維持するのは大変な事なんです。毎朝大勢のお客さんが大きなアトラクションに走って1番のりを目指すんですが、それをどうやってコントロールするか。その時に膝を少しでも擦りむいてもらってはいけないので皆苦労してます。皆さんは生命の安全に関わる事はないかもしれませんが、衛生上の問題は凄く気になりますよね。たとえばタオルが汚い、臭うという事があれば「bad experience」ですよね。お客さんに「この店は衛生を保っているのか?」と疑問を起こさせたらお終いです。

C(Courtesy)
礼儀正しいという訳ですが、いかに心からおもてなしをするか。

S(Show)
これはディズニーの世界の特徴なんですが、お客さんに来てもらって最高という状況を如何に作るか。非常に大切なのはクリーンを保つ事なんです。夢の世界に清掃車が入って来る事はありえないでしょ。中でも大事なのはトイレ。私は「サービスで大切な事は何ですか?」と聞かれると「スマイルとトイレがキレイな事」と必ず言います。お客さんがトイレに入って汚れている。不快な思いをする事は許されない事です。お客さんはトイレを使わないだろう・・・と高をくくってるとそういったお客さんも出てきますので気を付けて下さい。髪の毛が落ちているって事も気を付けて下さい。

E(Efficiency)
効率良くという事です。効率よく仕事をして結果的にお客さんを待たさない。食事の供給量は1日15万食で日本一です。平気で人を待たせない。予約制等の配慮が必要です。待っている方がダラダラやっていると思われないように効率よくする事です。

B従業員教育はゲスト体験重視型
・ゲストの満足とキャストの満足は”車の両輪”
教育については色々とやってます。教育が行き届いていると言われるんですが実際にやっている事は他と同じような事なんです。むしろ皆さんのお仕事の方が技術教育を凄くしていると思います。個人教師・トレーナーが付き、教科書・マニュアルというものによって情報・技術が徹底しているから良いと思うんですが。皆さんが関心を持っているのはサービスに関する事をどうしたら良いかという事だと思います。これが私共は1番困っている。1番弱いんです。これはマニュアルを作って教育してもなかなかサービス業にならないんです。実はサービスは教えようがないんです。サービスはマニュアルでああしなさい。こうしなさいとあるんですが、文章を書いたものを頭に入れる。それはどちらかと言うとテクニックなんです。やり方については頭に入る。皆さんがレストランに入り「○と○と○を下さい」と注文するとウェイトレスが「○と○と○ですね」と言いますよね。あれは反復するというマニュアルなんです。そうする事によって注文を間違えない。それによってイヤな思いをさせないというのが大事なんです。サービスというのはお客さんに喜んでもらう。お客さんに心から対応する。心の満足を感じてもらうというのがサービスだとすると、書いたものを読んでも心の問題というのは頭の中にスグには入らないんです。皆さんも心の問題を学校で習った事があると思いますがあまり覚えてないでしょ。お客さんの笑顔で一生懸命にやるんです。お客さんの笑顔が沢山あらわれて初めて「もっとやろう」という気持ちになるんです。そこが難しいんです。
私が教育を担当していた時に体験を発表してもらうという事で15周年が終わる頃に体験集を作ったんです。そうしたら100人以上が書いてくれました。ビックリするものばかりだったんですが、その中の1つの女性の書いてくれたもの、(「ゲストが届けてくれたハピネス」こちらを参照してください http://plaza.rakuten.co.jp/jifuku/7015 )です。この他にも皆お客さんが喜んでくれた。笑顔が返ってきたというものばかりでした。それが「ゲストの満足とキャストの満足は”車の両輪”」という事です。そういう関係が今までのビジネスにはなかったんです。そういう関係を作る為にどうしたら良いか。教室で教えるのではなく、プライドを持って楽しく仕事に就く。そういった気持ちにさせるのが大事なんです。それには夢のような雰囲気に包まれているている全ての事が大事なんです。教室ではなく経営そのものです。生き生きと楽しくお客さんに喜んでもらえるお店作りが大事なんです。それには経営者がニコニコして大事にしてくれる、私はここの代表だという気持ちでやるという事が必要なんです。経営の基本ではないでしょうか。「あんな経営者じゃ嫌になっちゃう・・・」といった状況ではサービスできないです。まず身の回りの経営姿勢が非常に大事であると言いたいんです。

C”心の対話”実現には意識改革が必要
・管理型から支援型。逆三角形の組織運営に
心の対話をしてください。それが大事ですよと言ったんですが、どうしたら良いか?こうしたら良いですよというものはありませんが1つだけヒントを。経営というのは三角形の組織なんです。経営者がいて、店長がいて、実際に髪を切る技術者がいる。経営者そのものがやっているお店もあるでしょうが・・・ これを逆三角形にする必要があります。お客さんと接する人、技術者が上に来て経営者が1番下に来るんです。
だいたいの組織は、しっかり目を付けて管理していく三角形の管理監督型なんです。「給料を払っているんだからしっかりと働いてもらう」とうるさい事を言うんです。これは物を造る企業には向いています。しかしサービス業はお客さんに接する人達が、その企業の1番の顔なんです。そういった人達を如何に支援していくか、サポートするかが大事なんです。
管理型から支援型へ頭の切り替えをしないと。本当に現場の人達がプライドを持って生き生きと、楽しく働いてもらえる。その環境をどうやって提供するかが非常に大切です。
私共の例で言うと、お客さんのいる所で働いている6割のほとんどが学生アルバイト、お客さんがキャストを見るというのはアルバイトなんです。という事はアルバイトが会社の顔なんです。ですがアルバイトという感じではやっていないですよね。会社の顔だとわかってますから。この人達が生き生きとプライドを持って楽しくやる。それが1番大事。そういう体制を作る。如何にサポートするかです。
よく「バイトやパートは人件費が高いから使うんです。この人達は他所から手伝いに来ているんです」という企業がありますが、これは絶対ダメです。お客さんに接する人、それが顔なんです。お客さんに再来を促す。この人達が大事にしないと。これがお客さんから笑顔を頂く手段だと思います。

先日、ある講演会で「心、心と言うけれど、心って何ですか?」と質問を受けました。困ったんですが、心というのは思いやりや親切心ですよね。だけどこれが相手に通じるか通じないかが1番大事。心が相手に通じるという事は、心=思いやり+熱意。この相手に伝えようとする熱意の方が大事なんです。よく「あの人は親切が身についている」と言いますよね。今日聞いた事を頭の中で考えるのではなく実行に移す。これが身につける事なんです。サービスというのもこれと同じで1人1人がサービスを身につける。それが出来ないと。じゃあどうしたら良いかと考える前に経営者自身がサービスを身につける。皆さんの仕事というのは地域のコミニケーションセンターなんですよね。店の中にいても街の中を歩いていても「あそこは我々に気を配っていてくれるな・・・」と思わせる。そういった付き合いが必要なんです。地域の方に喜んで頂く事が大事です。






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